凡人PhD留学記

特筆すべき功績のない、平凡ちょい上ぐらいの大学院生が、アメリカPhD留学出来た軌跡を記録します。

どのくらいの戦闘力でアメリカPhD留学する?〜エッセイ〜

皆様こんにちは、Lonです。アメリカのニューヨーク州で理系博士課程の学生として生活しながら、アメリカPhDの受験での経験などを綴ったブログを書いています。アメリカPhD受験で一般的に必要とされる書類について一つずつ解説してきましたが、本記事がラストです。以下に一覧を載せています。

 

1. Transcripts (成績表)
2. GRE scores (アメリカ大学院の共通試験みたいなやつ)
3. Letters of recommendation (推薦状)
4. CV (学歴や経歴などを記した一覧)
5. English language proficiency exam scores (英語の能力が標準以上であることを示す試験のスコア)

6. Essay (志願理由やアピールポイントなどを簡潔に文章にまとめたもの)

 

今回は6個目のエッセイについてです。

 

 

6. Essay (志願理由やアピールポイントなどを簡潔に文章にまとめたもの)

志願者の能力をテストのスコアや客観的な視点から示す資料がこれまで紹介されてきたと思いますが、エッセイは志願者自らの熱意や関心などを主観的に述べることができる書類となります。日本のPhD課程に通う方々が応募する日本学術振興会の奨学金でも、申請書の書き方次第では実績などがあまりなくても通る可能性があると聞いたことがありますが、エッセイも同じことが言える可能性があります。エッセイの書き方は人それぞれですし、これが正解というのもないと思うので、今回は僕が書いたエッセイがどういった構成だったかを解説していこうと思います。一個人のエッセイですので、あくまで参考程度にして下さい。

 

僕がエッセイを書いた際の大まかな流れは、

 

何故希望する大学院の専攻に行きたいのか、将来的に解決したい科学的な課題を含めて大きな視点で述べる

何故希望する大学院の専攻である必要があるのか、自身の経験やキャリア展望を交えつつ主観的に述べる

希望する専攻の中でも自身が特に興味のある分野を2つほど述べ、それぞれの分野について特定の研究室(PI)の名前を出しつつ志望理由を述べる

自身の研究のバックグラウンドを交えつつ、自分がどのように希望する大学院に貢献できるかを述べる

 

といった流れで、興味のある分野を2つの段落に分けて合計5段落でWord 1枚に収まるように書きました。単語数は500word未満くらいになると思います。僕は最終的に7校ほど応募したので、志望する研究室の部分を大学院に応じて変えて他の部分はほぼ固定する形で書きました。ここからは、僕が書いた内容を一例としてどのように論を展開するかについて書いてみようと思います。

 

第一段落は、興味のある分野の解決すべき課題について述べました。僕の場合、タンパク質工学や代謝経路工学(protein engineering, metabolic engineering)に興味があったので、それらを研究することにより、生物学的製剤の機能向上や小分子医薬品の持続的産生が期待出来る、という導入にしました。分野によって様々な課題があると思います。幹細胞や遺伝子操作の分野であれば、企業が着手することが難しい希少疾患の治療薬開発に着手できることや、化学の分野であれば、光触媒や電解合成により複雑化合物やその類縁化合物の合成がより簡便になるなど、それぞれの分野に沿った大きな課題を書くことが出来ます。

第二段落は、何故その分野に興味を持ったのかについて述べました。僕の場合、小分子化合物の生体内での振る舞いを観察する研究をするにあたって、タンパク質など大きな分子の扱いについて知らないと解決しない課題が見つかったり、大きな分子を扱う人にしか出来ない研究があることを書きました。日本での研究と似た内容をアメリカで学びたいのだとしても、必ず何かしら違う部分があるはずで、惹かれる部分があるからこそあなたは興味を持っているはずです。なので、単に今の分野をスケールアップさせたい、ではなく、今の分野とは違う、これから学びたい分野のこの部分が今の研究とは違って魅力的だ、という風に書けるのが理想的かもしれません。

第三〜第四、第五段落は、志望する大学院の特に興味のある研究室について述べました。研究室の名前を明記し、そこで研究することで、第一段落の内容を解決できる可能性があることを中心に述べたら良いと思います。ここでは、志望校の研究室で開発された技術を挙げ、具体的にどういった点で画期的(既存の技術より機能が優れている、デメリットを解決している、など)なのかなど詳細に述べることが出来たらベストです。少数(一つ)の研究室に絞って詳細に書くのか、多数(三つ)の研究室について広く浅く書くのかは自由だと思いますが、あまり長く書かず簡潔に述べることを心がけましょう。

最終段落は、これまで学んだバックグラウンドを活かして志望校に貢献できることを述べました。僕の場合は、化学合成や化合物を評価する実験系を確立した経験があったので、そういった化学的な側面と興味のある生物学的な側面を融合させた独自の研究を確立させることができるという風に書きました。ここでは、これまで学んだ手技が志望校での研究を加速させてくれることや、これまでの知識と学びたい分野の融合により独創的な研究が確立できるという形で書くといいのかもしれません。

 

以上が、僕が思うエッセイの書き方の一例です。正直、僕は論文など客観的に評価できる指標が最も大事だと考えており、エッセイでそこまで評価が変わるのかと考えてしまうのですが、完璧には出来なくともやはり無難にエッセイは仕上げて提出したいものです。PhD課程において、理論だった文を書けることは、自分が行った研究を適切に世に発表できる下地があることを示せるという点でも重要ですので、そういった意味でもある程度時間を費やして書きましょう。

ちなみに僕は、研究室の教授がPhDでアメリカに留学した方と繋がりがあったため、紹介していただいてその方にエッセイの添削をしていただきました。ポスドクで留学する人はそれなりにいるかもしれませんが、PhDで留学する人はあまり多くはありませんので、貴重なアドバイスをいただけたと思います。周りにPhD留学した人がいるかどうかを研究室の教授に聞いてみて、もし添削などしていただけるならばお願いしてみるのは良いと思います。もちろん、周りにそういった方がいなくて、このブログにたどり着いた人は僕でももしかしたら助けになれるかもしれませんので是非一声かけてください!